おはようございます 朝の青空 です。
今朝も青空。気持ちがイイです。
今週は、久しぶりに
私のお気に入りの桜木紫乃さんの小説 を再読しまして
やっぱり、心の残る良い作品だと感じました。
この気持ち
皆さんと共有したくて、以下に概要と感想を紹介させてもらいます。
1.本の紹介
・書名 『蛇行する月』
・分類 現代もの、フィクション
・単行本 2013年刊行
私が本作品を初めて読んだのは2018年で
その後、折に触れて読み返しています。
2.桜木紫乃さんの作品について
私の気に入っている作家さんの一人です。
桜木さんの作品は
10年くらい前に、『起終点駅・ターミナル』を初めて読んでから
何冊か読んでいます。
気にいっている点は
・困難に立ち向かう「力強い女性」の姿と
・心情表現の仕方
です。さらに
出身である釧路の厳しい自然環境を舞台に、様々な人間模様が描かれ
読む都度に、「幸せ」とは何か…を暗示してくれる点です。
やっぱり、そこが一番イイですね。
3.概要
「蛇行する」とは、思い通りの「幸せ」の場所に真っすぐ行けない苦痛を
「月」とは、光が当たらず、幸せ薄い主人公を
それぞれ表しています(私の推測です)
桜木さんの作品に多い、北海道釧路を主な舞台に
7人の女性達の、それぞれの生きざまを描いた人生物語です。
7人の女性とは、高校時代の友人や、勤務先で知り合った女性や
主人公の母親です。
・釧路という、厳しい自然環境で
決して幸福でなく経済的にも豊かでない生い立ちや
なかなか、田舎から抜け出せないでいる閉塞感や
職場や家族間での理不尽な人間関係 …のなかで
幸せを「待ち」続けたり「求め」続ける高校同級生それぞれの人生が
各自の目線で描かれています。
・7人の女性のうち、順子という一人の女性が主人公です。
順子が、他の6人と共通に関係していて
他の6人のそれぞれの物語を、紐付けています。
4.おすすめポイント
(1) 力強く生きる姿
裕福でない家庭に生まれ、特技や才能とかの持ち合わせもなくて
かといって、何かに努力している訳でもないような
ごく普通の、生まれながらに幸せ薄い女性たちが
仕事先や家庭での厳しい仕事環境、人間関係 に耐えながら
一生懸命に生きる姿の力強さが、読んでる人に元気をくれます。
(2)幸せを求め続ける姿
そんな彼女たちの
常に主観の中でのみ「幸せ」を探り続ける心情描写が素晴しくて
いつまでも心に残っています。
「はたから見たら不幸。でも本人は最大幸福」って感じで
この100%主観で、「自分の幸福を追い求める姿」こそが
桜木さんの作品全般について言えるテーマだと感じているんですが
私には、この作品が一番強く感じています。
彼女たちの
自分だけの「幸せ」をイメージする姿や
厳しい生活の唯一の拠り所となる「幸せを求める姿勢」が
人間の本能の様に、ドラマチックに描かれている点がイイですね。
5.感想
私を含め、総じて
・温暖環境の暮らしの中で
・他人やマスコミとの比較の中で
「幸せ」というものを評価し求める傾向にある現代人の「客観的な幸福観」と
主人公の「主観的な幸福感」との本質的な違いを
これでもか…と見せつけているように感じる作品です。
幸せの有無や、何を幸せにするかは、全くの個人の自由なのですが
この作品は
「幸せ」とは何か…という「幸せの本質」を暗示してくれています。
つまり
普通の家庭を持つことが、どれほど素晴らしいことかに気付かせてくれて
「幸せ」を追い求めるとは、こういう事なんですよ…と
一つのお手本を見せつけられてる気がします。
「もの」に依存するだけの幸福感…では無くて
「なりたい自分」になれる幸福感を
今一度、自分確認・点検したい人には、いい本だと思います。
6.最後に
温暖環境では、生ものや新鮮な食物は、腐化が速くなります。
同じように
私は、「求め続ける力」や「愛情」などの大切な感情も
温暖環境下では
その腐化が自然と速くなる…のだろうと感じました。
作者の主旨も、きっとそこに在るのだと思います。
初めて読んだ時に、「自分の幸せはどうなんだ…」と
チョットだけ、いや、かなり「はっと」したんですね。
この本を読んでから
仕事や人間関係で、チョット息苦しくなったときは
時々、この本が思い出て
「時には、厳しい環境も必要なのだ」…と
少し勇気と元気をもらったりしたことも、よくあります。
読んで頂き
ありがとうございました。
共有させて頂き、感謝です。//