まわり道にこそ人生のヒントがある ― 『まわり道を生きる言葉』を読んで

こんばんは。 「朝の青空」です。


先日のNHK-SONGS。TUBE 40周年特集が最高でした!
私の学生時代の、ど真ん中の夏を彩ってくれた数々の曲。とても懐かしくて嬉しくて、楽しかった「あの頃」や「失恋の苦い思い出」が一瞬でドッと蘇ってきた。まさに「音楽のマジック」。サザンもいいけど、TUBEもいいね。

"チョイト 終わらないで もっとまだまだbaby~"…この元気印、忘れないでいたい。(from  'あー夏休み')
懐かしさと同時に、あの頃の自分に戻ったような気持ちになり、そして今の自分にも「よし、また頑張ろう!」と元気を貰いました。


――

 

さて今日は、私が一年前に読んだ一冊をご紹介したいと思います。

まっすぐ進むだけが人生ではありませんよね。むしろ、遠回りしたからこそ見える景色や、思わぬ出会いが、人生を豊かにしてくれることもあると思います。そんな「まわり道の価値」を実感させてくれる一冊に出会いました。

 

それは『まわり道を生きる言葉』(大村智 著、2024年7月刊)という本です。

 

タイトルの通り、「まっすぐではなく、まわり道をするからこそ見えてくるものがある」――そんな人生の知恵を集めた一冊でした。まだ新しい本ですが、すでに私にとって心に残る大切な本になっています。

 

――

 

ノーベル賞学者・大村智さんとは>

著者の大村智さんは、2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞された世界的な化学者です。地方大学を卒業後、定時制高校の理科教師として教壇に立たれました。しかし研究者への夢を諦めきれず、再び大学に入学し、大学院まで進学。まるでドラマに出てくる熱心な教師のようで、私はとても惹かれました。

 

その後、大村さんは、土壌に生息する微生物がつくり出す化学物質を長年研究され、熱帯地方の風土病に効く薬「イベルメクチン」の開発に成功します。この薬は発展途上国で数億人の命を救ったと言われています。

 

さらに、日本の産学連携の先駆者としても知られ、海外の製薬会社との契約によって研究資金を得る仕組みをつくり上げました。世界的な功績を持ちながらも、どこか身近に感じられる――そんな人物像が、この本からにじみ出てきます。

 

――

 

<読書の楽しみ ― 「物語」と「言葉」>

私は、読書の楽しみは大きく分けて2つあると思っています。
1つは物語を楽しむこと。そしてもう1つは、心に残る言葉に出会うこと。

 

この本は、まさに後者――「言葉に出会う本」です。大村さんがこれまで出会った「心に響いた言葉」約170個と、それにまつわる解説やエピソードが収録されています。

 

単なる名言集ではなく、大村さん自身が人生の中で「腑に落ちた言葉」ばかりが選ばれている点に、他の本にはない重みと温かさを感じました。

 

ふとした一言に励まされたり、一冊の本に出会ったような納得感を得たりする――そんな体験が、私の生き方を少しずつ形づくってきているように感じています。

 

――

 

<私自身の読書体験・仕事と重ねて>

10年ほど前に大きな病気を経験したのをきっかけに、私は自分の生き方を考えたり見直したりするようになりました。私にとって大きな転機でした。

 

それ以来、ビジネス誌だけでなく、エッセイや小説からも多くを学ぶようになりました。曽野綾子さん、五木寛之さん、養老孟司さん、松下幸之助さん、斎藤孝さん、姜尚中さん……他、さまざまな著作に触れてきました。

 

そして気に入った言葉をノートにメモすることが習慣になっています。自分にとって腑に落ちる言葉というのは、自分の経験との照合を経て、まるで一冊の本を読み終えたような納得感を与えてくれます。そして、少しずつですが自分を「なりたい自分」に変えてくれます。

 

そんな中で出会ったのが、この大村さんの本でした。私は若いころから「プレジデント」というビジネス雑誌を読んでいて、その中で紹介されていた本『まわり道を生きる言葉』に自然と惹かれました。

 

私も設計開発の仕事をしているので、大村さんの言葉の数々に、現場で感じる葛藤や手応えと響き合うものがありました。研究者として試行錯誤を重ねられた大村さんの姿勢が、自分の仕事・経験・言葉ともどこか重なり、「これだ!」と共感できる部分がとても多かったのです。

 

――

 

<この本の特徴>

私が思う、この本の魅力は大きく二つあります。

 

1つ目は、紹介されている言葉が「観賞用の名言」ではないこと。
遅咲きの研究者であった大村さん自身が、実際に体験や努力の中で支えにしてきた言葉ばかりなのです。だからこそ、読む人に生きた力を与えてくれると感じました。

 

2つ目は、一つひとつの言葉に対する大村さんの解説があること。
なぜその言葉に共感したのか、どのような場面で支えになったのか。そこに著者の人柄や人生観が表れていて、単なる名言集とは一線を画しています。

 

――

 

<心に残った言葉たち>

本の中から、特に印象に残った言葉をいくつか紹介します。

 

1.「朝は希望に起き、昼は努力に生き、夜は感謝に眠る」


都内のお寺の掲示板にあった言葉だそうです。充実したよい人生をおくるためには、自分自身が良い姿勢、良い心のあり方で生活することが大切。私は「日々を生きる基本方針」として強く共感しました。

 

 

2.「幸福になる秘訣は、快楽を得ようと努力することではない。努力そのものの中に快楽を見出すことである。」


ノーベル文学賞作家・アンドレ・ジッドの言葉。努力が苦しいものに感じられるとき、この言葉を思い出すだけで前向きになれる気がします。「少しだけでも努力を楽しめるようになれば、夢の実現は自然に近づく」――そう教えてくれる一文です。

 

 

3.「思うように行かない所に、新しい道がある」


行き詰まりの中にこそ、新しい発想が生まれる。大村さんご自身の実感がこもった言葉です。人間関係で悩んだとき、この言葉に背中を押された経験があります。

 

 

4.「自己完成の十か条」


①仕事を必ず自分のものにせよ
②仕事を自分の学問にせよ 
③仕事を自分の趣味にせよ 
④卒業証書は無きものと思え 
⑤月給の額を忘れよ 
⑥仕事に使われても人には使われるな 
⑦ときどき必ず大息を抜け 
⑧先輩の言行を学べ 
⑨新しい発明発見に努めよ 
➉仕事の報酬は仕事である

 

王子製紙の初代会長・藤原銀次郎氏の言葉です。一つひとつが人生の羅針盤になる内容で、私は特に①②⑥⑩に強く共感しました。

 

――

 

<まとめに>

大村さんはノーベル賞受賞者という輝かしい経歴を持ちながら、語られる言葉は驚くほど身近です。そこには、長い時間をかけて培われた努力と経験が凝縮されているからこそ、心に響いてくるのだと思います。

 

「まわり道」こそが、人生を豊かにしてくれる。この本は、そのことを静かに、けれど力強く教えてくれる一冊でした。

 

迷いながら歩く一歩一歩に、実は大切な意味があるのかもしれませんね。

 

――

 

今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
では。